院内新聞

早期から矯正治療をしても改善が難しい人

矯正治療は、かみ合わせやあごの状態により、明らかに治せるケースと、ドクターにとっても「トライ」に該当するケースがあります。
当院はインビザラインを中心として、裏側矯正、非抜歯矯正まで治療体系の種類が大きく、昔は初挑戦のケースも今より多かった気がします。しかし当初の治療計画通りに、「患者さんの努力の甲斐あって」きちんと治せることが確認できたときの喜びはひとしおで、昔はトライに該当していたケースでも、最近では自分の中で挑戦と言える状況が前よりは少なくなってきた気がします。しかしながら、できることとできないことがクリアになった一方で、一部の本当に難しいケース(外科矯正でしか解決できないケース)が未解決事案として残ってきたのも事実です。今回は特に成長期のそんなケースについての話です。

早期の矯正治療について理解していただきたいことがあります。

1「治る」から治療を行う場合(通常)

2 治すのは困難だが、成長と共に「さらに悪くさせないため」治療に踏み切る場合

という2つの治療の理由があります。

治す側の感情としては、難治症例で治療の見込みが少ない2に該当する子供であっても、できるだけ良い結果を得たいと願って何度も来てもらったりして治療しますが、契約前に前もって治療が難しく協力が不可欠であり、本来外科矯正のケースであることを何度も説明したにもかかわらず、ある日の装置や訓練の説明の中で「本当に2期も必要か?」と親御さんがイージーに考えていたり、おそらくイージーに考えているゆえに装置や訓練の協力も得られていない事例もあって、最近は2のケースは期待に応えるべく努力するよりも、責任が持てないので治療自体をお断りすることが多いと思います。

<受け口の場合>
たとえば遺伝性の受け口の場合、早期から成長終了までの10年に亘る継続的な矯正治療の結果については、国際的な論文を見渡してみても帽子の装置を使っても外したとたん受け口が元通り(かそれ以上の程度まで)再発すると結論づけられています。
完全に覆っていないような受け口では完治も期待できますが、結果的に完治した人というのはもともと遺伝の影響が少ないか、なかったのではないかと疑われます。遺伝の影響は非常に強いので装置の効果を後々容易に打ち消してしまいます。
当たるも八卦当たらぬも八卦で、当初遺伝が疑われてもうまく治ることもあるし、その逆もあります。治療の早期の段階ではお子様のあごがどう変わるか、伸びやすいのか、帽子である程度押さえることができる程度なのかどうか確実な予想ができません。ただ、すくなくともたとえば完全に下の歯が上の歯を覆ってしまっているような受け口の場合は、明らかに遺伝性で、「今悪いから将来さらなる悪化を極力防ぐために努力する」治療に該当します。たとえこちらで最善を尽くしても思春期にどんどんあごは出てくることもあるわけで、可及的に上の前歯を下の前歯に対して覆うことがついにできなければ、将来の外科手術になる可能性についても覚悟しておく必要があります。

<出っ歯の場合>
受け口以外に、出っ歯の場合も治療が難しい場合があります。
教科書的に同じ分析値(Steiner分析におけるANB,Rickets分析におけるfacial axisなど)でも治療の難易度が難しい出っ歯の場合とそうでない場合があります。

右と左の人では、矯正学で一般的に行われる通常の分析方法では右の方が標準に近い(=問題ない)と評価されます。
1 Rickets分析におけるfacial axisの値(頭蓋に対する赤い点の位置)は右と左で同一の値を取ります。
2 Steiner分析におけるANBの値は右の方が標準に近く、軽度であると評価されます。

しかも、実際のお口の中では右の方が左よりも噛み合って見えます。

しかしながら、実際には右の方が左よりも側貌の改善という意味でも断然難しいのです。
下あごの形態(緑色の部分)が決めてです。
なぜなら、左はオトガイ(あごさきのカーブ)が豊隆していますが、右はオトガイがほとんどありません。
左の場合、前方に成長を誘導するという方針が立てやすいです。
しかし右の場合、オトガイ形成という外科的な形成手術をしない限り、オトガイの形態の改善を自然に誘導することはできませんし、成人になるのを待って上下を抜歯しても、さらなる上の前歯の後方への傾斜と上口唇の後退感を招きやすいので、結局手術をしない限り満足を得られないのです。

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