顎変形症に対する外科矯正治療について

矯正治療の目的3点に集約されます。

プロファイル(顔貌)の改善 かみ合わせの改善 歯並びの改善

目的:
オトガイの後退やあごの変形がある場合、解決策を自分で判断してはいけません。当院は革職人とは違い、原因を治療します。まずあごのズレ、噛む筋肉や表情筋のアンバランス、あごの関節と下あごの位置を、スプリントというマウスピースを用いて正常な位置にします。スプリントは、リラックスにより筋肉を減少させ、下あごの位置を改善あるいは特定し、あごの関節の緩みを改善します。あごの緩みを改善してから矯正のための診断を行い、それから顔貌の原因となっている歯の位置不正を矯正治療によって改善します。矯正だけでは骨格の変形が改善できないような場合には外科手術を伴う矯正治療(外科矯正)による改善を行います。案外スプリント後の検査により矯正だけで顔貌が改善するような場合もあるので、初診の診断では手術までは確定させないことが多いです。
矯正治療だけではどうしても下顎の成長や偏位の問題を改善できない場合なども外科治療の適用となります。


金額について(初診の方):
上下顎の骨格の形態不正のことを顎変形症といい、日本では保険治療の範囲となっています。3割負担で実質75-80万円程度となります。但し、当院では外科矯正の対象となりそうな場合は外科矯正の必要性や方針を判断するためにかみあわせの治療を行っており、これは実費で25万円+消費税がかかります。(Ⅰ/Ⅱ期治療から外科矯正に移行する場合は外科矯正前のスプリント治療費はⅠ/Ⅱ期治療費分で充当されます。)。 外科矯正の対象外である患者に手術を行う必要はありません。ただし、下顎の先端の骨の形態を手術で調整するオトガイ形成術を単独で行う場合は①顔貌のみの改善、イコール美容目的であるため、保険が適用されません。

金額について(Ⅰ/Ⅱ期治療から外科矯正に移行する場合):
上下顎の骨格の形態不正のことを顎変形症といい、日本では保険治療の範囲となっています。3割負担で実質75-80万円程度となります。たとえ外科手術が当初の想定外であったとしても、それまでの当院で治療にかかった費用はお返しできません。

外科矯正と通常の矯正の比較

あごの形に問題を抱えている人に対して外科矯正を行う場合と、通常の矯正を行う場合との比較です。
この項目を読めばほとんどのことが理解できるようにまとめました。

  外科矯正 通常矯正を適用の場合
主な適用範囲

外科矯正

骨格の成長終了後(通常女性16歳、男性18歳、重度であれば20歳頃まで待つ)

シビアな骨格性上顎前突(下あごよりも上あごが大きく前に出ている、あるいは小顎症)
大きめの受け口
③オトガイ、顎の外形が左右に偏位
④今のかみ合わせに問題がある

(例えば、楽に口を閉じていると感じる位置では下顎がかなり後ろに下がり、上下の前歯が空いてしまう場合は、かみ合わせの改善に外科的手術が必要と判断される。)
⑤上あごも下あごも面長な傾向があるようなシビアな骨格性オープンバイト(開咬)

通常矯正を適用の場合

たとえば、オトガイが後退している、前歯が当たらないオープンバイト(開咬)、あごの左右のズレなどのように外科矯正の骨格的傾向があっても、スプリント後の精密検査によって歯の位置が悪いことが原因であり歯によって改善可能であれば通常矯正で十分見た目の改善が可能なこともあるため、安易な決定を行う前にあごの位置を確認する必要がある。

その反面、当院であごの位置をスプリントによって診断した結果明らかな外科矯正の適用対象であるにもかかわらず、本人の希望によって通常矯正で行う場合もある。その都度、その人に応じて検討を重ねる必要があるが、外科矯正を行わないとどうしてもかみ合わせ、歯並び、側貌どれかの改善が難しくなりQOL(生活の質)に影響を与えることが多い。

金額

外科矯正

保険が適用となり、自己負担額の合計は3割負担で75万円(手術方法、期間による。障害者手帳を有する場合は1割負担、下顎のみの手術だと頻度は少ないが安くなる)

(外科矯正ケースに)通常矯正を適用の場合

当院の矯正料金表に準ずる
(装置によって使用する材料や設備、治療の質や期間などの条件で変化。)

治療の流れ

外科矯正

手術前後の矯正治療を当院で行う。目処が立ったら紹介先病院と手術日を決定する。智歯抜歯の予定を立てる。入院はほとんどの病院で12日程度。手術直前には当院で顎間固定装置とシーネ、ウイング、パラタルアーチの調整を行う。術前に300ml程度の自己血採得を行う。術後はバンド固定あるいは顎間固定および経管栄養を1週間行い、それ以降は通常食に戻していく。

手術は当院からの紹介先病院にて行い、12日間程度の入院期間が必要となる。
入院期間は上顎の手術の有無や個人により異なる。6ヶ月前までに手術日を予約しておくのが望ましい。日程が合わなければしばらくそのまま手術待ちとなることもある。

術前に製作するシーネ及びウイング
術前に製作するシーネ及びウイング

顎間固定用ワイヤー
顎間固定用ワイヤー

(外科矯正ケースに)通常矯正を適用の場合

埋伏智歯の抜歯以外は、医院内で対応。(智歯は活用する場合があるのであらかじめ抜いてしまわない方がよい。)

仕上がり

外科矯正

骨格的に難しい人であっても理想に近い歯並び、および骨格の調和、側貌の改善が得られる。
また、顎位の診断がしっかり行われていれば、結果としてかみ合わせの症状の改善、機能的な快適さが得られる。
但し、あごを切って動かすので、術後の上下のあごの位置の安定が図られていることが大前提となるため、外科をしてもしなくてもほとんど変わらない結果であれば行わない方がよい。

(外科矯正ケースに)通常矯正を適用の場合

A.当院の診断で明らかな外科矯正の適用となるケースを仮に通常矯正で行う場合、多くは骨格の大きさのアンバランスや左右のずれが大きく歯をきれいに並べたり側貌を改善することが難しい。現在の骨格に応じて歯並びのみを改善するため、見た目の印象は一般的に大きくは変化しないか、骨格性の上顎前突の程度が大きい場合、上唇が下がり、鼻唇溝が平坦になってしまう可能性がある。
B.患者が最初は外科が必要ではないかと考えていたり、当院の診断でボーダーケースであっても、診断の結果、外科矯正をしなくてもアンカースクリューなどにより歯並び、見た目、安定、患者の満足が十分得られる場合もあるので、当院ではぱっと見で手術したほうがよいかどうか判断しないことも多い。

矯正治療の難しさ、
期間など

外科矯正

歯の移動量が少なくて済むので、手術前後の矯正については通常矯正で行うよりもむしろ期間や手間がかからない。
顎の変形が大きい場合は後戻りを考慮し多めに動かす必要がある。上顎後方部を大きくもち上げる、小さな下顎を大きく前方に移動させる(仮骨延長法)、下顎を大きく側方に移動させるというのはやや難しいものの、近年技術の進歩により手術時間が短縮されてきている。

(外科矯正ケースに)通常矯正を適用の場合

外科矯正の適用対象を通常矯正で行う場合、矯正用マイクロインプラントの使用、本人の積極的な筋機能訓練の協力、ゴム使用の協力が不可欠となる。外科矯正よりも長期間(3年以上)にわたることが多い。

リスク

外科矯正

本手術特有のリスクとしては以下が挙げられる。
①局所麻痺の後遺症(歯ぐき、顔面皮膚あるいは舌の局所的な麻痺の残存)
②まれに骨体を固定したプレートのゆるみによる骨体の動揺
③まれに舌や手術後のおう吐による窒息のリスク
④一過性の大きな腫れ
⑤大開口できない状態がしばらく続く。手術後の患者の協力が得られない場合には、容易に後戻りが起こりうる。

(外科矯正ケースに)通常矯正を適用の場合

当院で明らかな外科矯正の適用と判断されるような場合に通常矯正を行うと、外科矯正よりも矯正後に十分なかみ合わせが得られなかったり、後戻りをおこし再治療が必要となる可能性が通常よりも高くなる。但し患者さんが外科と思い込んでいても当院の判断で外科が必要ないと判断される人は、きれいな側貌、きれいな歯並び、十分な安定が得られることもある。

治療後の後戻り

外科矯正

舌のくせやあごの関節の安定が悪いと、骨が筋肉に引っ張られて後戻りを生じる場合がある。後戻りを踏まえた術式の考慮や、ある程度の期間帽子をかぶる必要がある

(外科矯正ケースに)通常矯正を適用の場合

あごの関節に問題があったり、舌のくせがあるほど後戻りしやすい。舌の筋機能訓練の継続を心がけたりする。

患者の協力

外科矯正

移動量の10%〜50%の後戻りを生じるため、完全に後戻りを押さえ良好な結果を得るためには、手術後6ヶ月間の昼夜顎間ゴムおよび在宅時のオトガイ帽の使用は必須。筋機能訓練の協力が必要。
また、手術前に全ての智歯の抜歯が必要。

(外科矯正ケースに)通常矯正を適用の場合

ハイプルヘッドギアの使用努力、マイクロインプラントの埋入、特定の歯の抜歯(たとえば小臼歯抜歯や智歯を保存するかわりに一つ手前を抜歯するなど)が必要。
特定の日に手術を行うことになる外科矯正とは異なり、本人がある程度スクリュー、ヘッドギアやお口の中の装置をがんばらなかったり慣れない場合には、治療が進んでいかない。

手術方法について

上顎単独で手術を行うことはありません。下顎単独、下顎+オトガイ、上下顎、上下顎+オトガイ、あるいは下顎の骨が華奢な場合は上顎+オトガイといった組み合わせで、矯正の診断に合わせて決定されます。

上顎:Le fort I型骨切り術

上顎:Le fort I型骨切り術

上顎骨歯槽突起を中心に、上顎骨から前鼻棘、前歯部、臼歯部を一塊として移動させる。上顎の場合、ほとんどこの術式が適用となる。いくつかのねじ穴が付いたチタン製プレートとチタン製ネジにより固定を行う。(生体吸収性のネジやプレートを使うこともある。)ネジは安定後、希望があれば撤去も可能。

下顎:SSRO

下顎:SSRO

下顎枝を矢状方向に分割する。現在最もポピュラーな方法。いくつかのねじ穴が付いたチタン製プレートとチタン製ネジにより固定を行う。(生体吸収性のネジやプレートを使うこともある。)
ネジは安定後、希望があれば撤去も可能。

下顎:IVRO

下顎:IVRO

下顎枝を垂直方向に分割する。顎関節の問題が改善されやすいが、矢状分割法よりも切断面の治癒に時間がかかる。いくつかのねじ穴が付いたチタン製プレートとチタン製ネジにより固定を行う。(生体吸収性のネジやプレートを使うこともある。)ネジは安定後、希望があれば撤去も可能。

下顎:オトガイ形成術(genio plasty)

下顎:オトガイ形成術(genio plasty)

下顎オトガイ部を切断し、前方・後方・上下方向に移動させる。下顎SSROが困難な場合、SSROを行わずオトガイ形成で代用することもある。いくつかのねじ穴が付いたチタン製プレートとチタン製ネジにより固定を行う。(生体吸収性のネジやプレートを使うこともある。)ネジは安定後、希望があれば撤去も可能。

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